〈5〉道北最大手・北野組の倒産
利益確保が必要不可欠
兵庫・新井組、石川・真柄建設、宮崎・志多組、山梨・長田組土木―。いずれも県下トップクラス企業がことし、100億円以上の負債を抱え倒産した。中堅ゼネコンや上場企業の倒産も相次ぐ中、道内でも道北最大手の北野組が自己破産。グループ2社を含めた負債総額は約141億円にのぼり、3社が抱えていた従業員186人は全員解雇となった。
格付へのこだわり
「雇用を維持するため、公共事業が減少していく中で役所の格付にこだわり、民間にシフトしていったが、失敗した」。同社の元事務部門幹部はこう語る。格付を維持するため、完工高を重視。実績確保のため、不動産開発事業からの補てんを前提に、無理な受注も行った。
その典型が新潟県内で施工した高速道路工事で、採算度外視で受注したのに加え、現場環境の悪さなどから経費が拡大。さらに、当初予定していた運搬砂利業者が倒産し、大幅に高い業者との契約が余儀なくされた。もともと採算性がなかった工事だが、こうしたことから赤字は6億円まで拡大。一方で、予定していた不動産部門からの補てんもできず、経営圧迫の要因の1つとなった。
ワンマン体制の末
「社内の権力闘争には勝ったが、経営には負けた」。黒木氏のことを指し、元営業部門の幹部はこう評する。不動産部門での甘い見通しやリスクの高い手法など、営業戦略面のずさんな経営はもとより、社内体制を指摘したものだ。
自らの成果を誇示しようとした黒木氏は、東京での仕事を優先。役員会議でも、東京での成果だけを示し、会社全体で戦略を検討することはなかったという。その中でブレーンとなる経営陣は皆無となり、文字どおりワンマンに。その体制は、社長を退いたあとも続いた。
その影響は財務・経理にも及ぶ。自社でのコスト管理が徹底されなかった一方で、グループ企業の財務も同社が担当。「太陽舗道には数10億円の内部留保があったが、消えていた。それがあれば同社は倒産しなかったかもしれない」(前出の元営業幹部)。
「公共事業が減る中で、他に利益を見いだそうというのは間違っていなかったが、それをやるための体制が、あまりにもずさんだった」(同)と言うように、方向性そのものは可能性があるものだったと言えよう。しかし、それを潰したのがワンマン体制だった。
他社の受注に影響
現在、解雇となった従業員のうち、8割程度は再就職が決定。下請企業の連鎖倒産もなく「今のところ、相談も問題となるようなものはない」(旭川商工会議所)とし、今のところ、地元経済への大きな影響はないもようだ。
一方、同業他社への影響は少なからず出ている。主に同社がメーンとなってJVを結成したケースだが、ある工事では、前払金が他の構成員にわたっていなかったため、2番手の企業が資材費などを全額捻出。議会承認が必要な工事を落札したものの、同社の倒産により、契約に至らなかったケースもある。このほか、これからの受注を目指して結成していたJVもあった。
重たい事業の削減
かつて岩手県建協の会長企業で、東北で初めて完工高300億円を突破しながら、温泉事業の失敗などで倒産に至った高弥建設(盛岡、現在は(株)タカヤ)。民事再生を経験した望月郁夫社長は「いわゆるゼネコン型のビジネスモデルは今後通用しない」と断言する。「完工高重視でワンロットが大きい公共事業をやったが、市場が縮小する中で利益が出ない」と説明。同社は現在、民間・個人を対象とした建築、リフォームなどの事業を展開し、往時の企業規模にすべく拠点展開する手前まで来ているという。
一方、北野組の元営業幹部は「適正な利益を確保していけば、公共事業中心でも会社は維持できた。ただし、身の丈は縮めなければいけない」との考えを示す。
双方の言葉に共通するのは、利益を確保しなければ、生き残っていけないと言うことだろう。同時に、公共事業削減が続く状況下、それを生業としていくには、会社の縮小が不可避ということも示す。北野組の事例は対岸の火事ではなく、道内企業にとって、それだけ公共事業の削減は重たくのしかかっている。
(北海道通信日刊建設版 平成20年12月5日付2面)



