
〈4〉調査基準価格めぐる攻防激化
適正な競争環境整備を
10月の全建地域懇談会では、道建協が公共投資規模の安定と受注機会確保などを強く訴えた
半数が調査に該当
開発局発注工事で、調査基準価格ぎりぎりを狙った低価格競争が注目された1年だった。10月末現在の一般土木工事の開建別平均落札率をみると、帯広が84.9%まで低下。札幌、石狩川も80%台まで落ち込んだ。釧路は90.6%だが、10月は86.1%となっている。
ある開建では約50社が応札し、半数近くが低入札価格調査に該当するという事態も発生。そうした状況にない地域の建協担当者も「早晩、同じ状況になるだろう」とし、低入札の波がさらに拡大するとの見通しを示す。
これまでもダンピング受注の問題は存在したが、それはいわゆる不良・不適格業者の参入が主因だった。公共事業費の削減と軌を1にするように、落札率も低落をたどってきたものの、ダンピング受注は一部にとどまり、極端な落ち込みはみられなかった。
変化の契機となったのは、全国的な談合摘発を背景に大手ゼネコンが17年2月に旧来のしきたりとの決別を謳った「コンプライアンス宣言」だ。17年度のWTO工事の落札率は84.8%。前年度から11.9ポイントも低下となるなど、影響が顕著に現われた。
法令順守が潮流に
コンプライアンスが時代の潮流となる中で、激しい低価格競争の波が拡大しつつあるのが現状だが、適正な競争が展開されているとは言い難い。一般土木B等級のある業者は「低価格競争には参加したくないが、職員の固定費もかかり、そんなことは言ってられない状況。利益が1%でも出れば御の字」と置かれた立場の厳しさを語る。
国土交通省は、調査基準価格の上限の85%以下の落札率になると下請業者が赤字、工事成績も低下するとの調査結果を明らかにしている。落札率が急落している開建では、こうした85%以下の落札が等級を問わず頻発。下請業者へのしわ寄せや品質確保が懸念される。
何より、企業が経営を維持する上で必要な利益の著しい低下が危惧される。道内建設業の利益率は近年、売上高を問わず落ち込みが続いており、他業種と比べても大きく見劣る状況。完工高重視のため、無理な受注をして経営破たんするという悪循環の事例も相次ぐ中、それを一層加速させるような環境にあると言えよう。
基準価格引上げを
調査基準価格については、再見直しを求める声が業界内に根強い。10月末に開かれた全建と国交省との地域懇談会でも、道建設業協会が「適正な予定価格に対し落札率が90%以上に」とさらなる引き上げを要望。全国各ブロックでも同様の声が挙がっている。
その後、札幌市内で行われた講演で、同省の谷口博昭技監は「政治決断があれば別だが」と前置きした上で、「引き上げが必要というデータは現在持ち合わせていない」と従来の認識を踏襲。ただ、予定価格の上限拘束性については「将来的に議論することが必要」とも発言し、調査基準価格とともに、大きな検討課題であるとの考えを示した。
健全な企業も淘汰
一方で、言うまでもなく、公共事業の削減が競争激化の要因となっている。この点、市場の拡大で供給過剰構造が改善されれば、過度な低価格競争に歯止めがかかることが期待される。自民党では、近年続いている公共事業関係予算3%減の概算要求基準の凍結を求める動きが顕在化。ただ、その行方は現時点で不透明だ。
他方、供給過剰構造が続くことを見通して「淘汰が進めば、低価格競争はいずれ収束する」との見方も少なくない。ただ、その過程では健全な企業までもが退場を余儀なくされかねず、実際に地域の雇用を支え、災害対応等にも大きな役割を果たしてきた企業までもが、相次ぎ倒産している現状がある。
業界、そして建設業という産業の健全な発展に向けては、適正な競争環境の整備が不可欠。そのためには、予定価格や調査基準価格の在り方なども含め、発注者・受注者双方の英知と倫理が求められている。
(北海道通信日刊建設版 平成20年12月4日付2面)


